7年ぶりに、日本の「サウンド・アーキテクト」Cornelius(小山田圭吾)が台北に帰ってくる。10月11日、《秋OUT音楽節》のステージに登場し、音響・照明・映像を融合させた没入型のライブを披露する予定だ。75分間のパフォーマンスでは、『FANTASMA』『POINT』から近年の作品まで、30年にわたる創作の軌跡を凝縮。単なるコンサートではなく、「ライブ」という概念を覆す夢のような体験となるだろう。
公演を前に、私たちは再びCorneliusにインタビューする機会を得た。この7年の間に、パンデミックからAIの台頭まで、世界は劇的に変化し、かつて彼が音楽を手掛けた『攻殻機動隊』の未来像は現実に近づきつつある。そんな時代において、Corneliusは何を考え、どう創作と向き合っているのか――創作、テクノロジー、そして継承について話を聞いた。

── 7年ぶりの台湾公演となります。この間、アジアや世界の音楽シーンにはどんな変化を感じていますか?また今回の《秋OUT音楽節》でのライブについて期待していることは?
Cornelius: この10年ほどでタイやインドネシア、中国や台湾でも、オルタナティブでDIY精神を持つアーティストや環境が増えてきているように感じます。久しぶりの公演なのでとても楽しみにしています。古い曲から最新の曲まで網羅したセットリストになると思うので、お楽しみに。
── あなたの音楽人生は渋谷文化と切っても切り離せません。特にPARCOや「セゾン文化」が盛んだった80年代、当時の渋谷はあなたにとってどんな存在でしたか?
Cornelius: 1980年代の日本では、西武グループ(セゾングループ)がアート、音楽、映画などのカルチャーに力を入れていて、その影響はとても大きかったと思います。僕はその頃ティーンエイジャーで渋谷に住んでいたので、Parcoにはよく行っていました。セゾングループが経営するアートスペースでアルバイトをしていたこともあります。
── デビュー30周年を迎え、音楽のスタイルは明確な変遷をたどっています。『FANTASMA』のコラージュから、『POINT』以降のミニマルで空間を意識した作風へ。その中で最大の転機は?
Cornelius: 音楽の変化は心境やライフスタイルの変化、時代の空気感やテクノロジーの進化、自分の周りの状況によって常に変わっていきます。特に大きな変化は『POINT』の頃で、ミニマルで空間を意識した音楽に変化しました。続く『Sensuous』ではそれをさらに先鋭化。その後の『Mellow Waves』や『Dream In Dream』は、その手法を踏まえて少しメロウな歌やメロディが戻ってきた感じだと思います。次の作品はまた大きな変化があると思っています。
── この30年間、アルバム制作だけでなく広告、インスタレーション、映像音楽など様々な分野に取り組まれています。変わり続けるもの、不変なものは何でしょう?
Cornelius: 変化したのは、音楽を作ったり伝えたりするテクノロジーやメディア、市場です。僕の音楽を作る姿勢や音楽に対する興味は変わっていないと思います。
── 「音色は旋律より重要」と言われることもありますが、DAWや空間音響、AIの進化によってその考えはどう広がっていますか?
Cornelius: 実際に「音色が旋律より重要」と言った記憶はありません(笑)。ただ、ミニマルな音楽においては音の質感が重要視されることはあると思います。
── 『攻殻機動隊 ARISE』の音楽を担当されました。同時期にMETAFIVEでダンス寄りの楽曲も制作されていましたが、後の『Mellow Waves』にどう影響しましたか?
Cornelius: 『攻殻機動隊 ARISE』では戦闘シーンなど激しい音楽を求められることが多く、自分の曲のストックからアップテンポなものを提出しました。同時にMETAFIVEでもダンスミュージック的な曲をやっていたので、自然とソロの『Mellow Waves』は静かな曲が多くなったのだと思います。
── 『攻殻機動隊』が描いたAIの世界は現実に近づいています。AIと音楽の関係をどう考えますか?
Cornelius: AIの進化はすごいスピードで、自分も制作に取り入れ始めています。未来がどうなるか心配な気持ちもありますが、人間とAIの共作の可能性には大きな興味があります。AIが人間を追い越すまでは、クリエイティブに使えば面白いものができるのではないかと思います。
── 創作以外の生活でもAIを使っていますか?
Cornelius: あらゆることに使っています。このインタビューの翻訳やまとめもAIに手伝ってもらっています(笑)。
── 最新作『Ethereal Essence』ではAIも取り入れたと伺いました。どのように関わったのでしょう?
Cornelius: 『Ethereal Essence』は昔の曲を集めたコンピレーションで、制作にAIは使っていません。ただ、もともとタイトルがなかった曲が多かったので、アルバム化の際にAIと一緒にタイトルを考えました。
── 高橋幸宏さんをはじめとするレジェンドとの共演で「音楽の継承」を肌で感じられたと思います。どんな影響を受けましたか?
Cornelius: 音楽家は亡くなっても作品は永遠に残り続けます。音楽は物質ではなく空気振動であり「パターン=ミーム」だからです。ミームは演奏・模倣・再解釈を通じて伝わり、世代や国境を越えて変化しながら生き続けます。自分もだいぶ歳をとってきたので、より自分の音楽に集中していきたいと思っています。
── 今では若い世代にも大きな影響を与えています。世代を超えた対話をどう感じますか?
Cornelius: 音楽は言葉を超えた感情伝達の力を持ち、国境や世代を超えて共有される文化的普遍性があります。それが音楽の素晴らしいところであり、とても嬉しく思います。
── 最後に、今回の《秋OUT音楽節》でのライブの特徴を少しだけ教えてください。
Cornelius: 古い曲から新しい曲までを網羅したセットリストになると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。
渋谷で青春を過ごした少年時代から、AIを取り入れる現在の創作生活まで。Corneliusの語る「変化」と「不変」は鮮明だ。技術やメディアは常に進化する一方で、音楽への根源的な愛は変わらない。その揺るぎない姿勢こそ、彼のサウンド建築の青写真であり、まもなく台北でのライブは、ファンにとってその内部を体験する絶好の機会となる。
《秋OUT音楽節 2025》 イベント情報
📅 日程:2025年10月10日(金)~10月12日(日)
📍 会場:台北・公館エリア複数会場
🎤 Cornelius 公演:10月11日(土)20:40–21:55(75分フルセット)
🎫 チケット:
・2日間通し券 前売り NT$2,980
・1日券 前売り NT$1,980
・1日券 当日 NT$2,200
・前夜祭 前売り NT$1,000 / 当日 NT$1,200
・秋月壓軸專場票 NT$1,500(Cornelius専用チケット)
🔗 購入リンク:https://pipelivemusic.kktix.cc/events/chillout2025-a01
✦ 出演アーティスト ✦
Day1 ▸ 10/11(土)
有料ステージ:Cornelius(JP)|Mola Oddity|KID FRESINO(JP)|Andr|VOOID|恐龍的皮|小老虎 J-Fever(CN)|quicksand bed(TH)|JADE|LINION|Mong Tong|我是機車少女|DSPS|徐噴以煙|Dac Band|Yufu|Formosa Sound System|DJ Spykee & DJ WOODO
無料ステージ:布萊梅|打倒三明治|FunkyMo|緩緩 Huan Huan|老莫 ILL MO|莉莉周她說|DIZLIKE|The Tic Tac|Everydaze|工口紳士|芒果街老爸|Ludy Lin|嚴梵|Malpaca
Day2 ▸ 10/12(日)
有料ステージ:礼賛(JP)|DJ KENTARO(JP)|9m88|Karencici|陳嫺靜|Green!Eyes|FORD TRIO(TH)|LÜCY|That’s My Shhh|VIDEOTAPEMUSIC(JP)|百合花|NaraBara(CN)|SKARAOKE|破地獄|淺堤|野巢
無料ステージ:陳泳希|Osean|閃閃閃閃|守夜人|Easy Weeds|hue|EVERFOR|靈魂沙發|汪定中|ZENBØ|榕幫|阿橘
前夜祭 ▸ 10/10(金)
someshiit 山姆|debloop|COLD DEW

